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ドイツのフットボールカルチャー誌 11 FREUNDE の最新号(#152 2014年7月号)にロシアプレミアリーグのディナモ・モスクワでプレーするケヴィン・クラニー、アタシのタスキくん、そして彼のスパルタク・モスクワの同僚パトリック・エバートの3人が会したインタビューが掲載されています。インタビューが行われたのは今年の5月、たぶんリーグ終了直後だとおもいます。 こちらの雑誌はiphone、ipadでデジタル版が買えます。おねだん500円 しかしコピペがきかないこの記事を読むのはどえらい苦労でございました・・・ (追記 2014-08-07) この記事が11 FREUNDEのwebサイトで読めるようになりました。全文収録されております。 「ああ神様、あいつらみんなヤな奴だ!」 なぜフットボーラーのキャリアの絶頂期でロシアに? モスクワの外国人傭兵、ゼルダー・タスキ、ケヴィン・クラニー、そしてパトリック・エバートがお金と五月の雪と手榴弾を語る。 みなさん、昨日のモスクワは大吹雪でした。五月に。ホームシックになりませんか? ゼルダー・タスキ すごくびっくりしたよ。ドイツじゃとっくに暖かくなってる時期にここじゃ何回も雪が降るんだよ。 ホームシック?全然。 パトリック・エバート 少なくとも積もらない雪には心底拍子抜けさせられるね。でも自分はまだここに来たばっかりだから、帰ることは考えていない。これまでも雪から生き延びてきたし。 ロシア行きを案ずる人はいなかった? エバート 俺の母親は少し心配してた。「パトリック、もう行くことになっちゃったのなら、どうか仲のいい友達を連れて行って。そしたらお前は一人ぼっちじゃないから!」って。 俺は彼女に従った。こっちに一緒に来ている友達のダヴィッドはいろいろ助けになってるよ。 タスキ でも決心するのはけっして簡単なことじゃないから、みんなあらかじめたくさんの人に尋ねるよね。 クラニーさん、あなたは2010年からモスクワでプレーしていますが、2人が来るなんて思ってましたか? ケヴィン・クラニー なにか問題でも? モスクワの悪口言うのはここに来たことない連中だね。 タスキ 困るのは交通渋滞だけだね。 でも1100万人もの人がここに住んでいればロジカルなことだけど。6車線の道路が12車線になれば解消されるかな。 雪、交通渋滞。他に来る前の予測が当たったものは? クラニー 初めてロシア人に会ったときは俺もありがちなイメージを抱いたもんだった。 「わー神様、こいつらみんなちっともフレンドリーじゃないし、みんないけ好かないやつ。」って最初に思った。 初めて家族といっしょにチームで食事に行ったときも困惑した。チームメイトは俺と握手するのに、うちの嫁とはしないんだ。だから俺はロシアは女性蔑視の国かと思った。 でもそういう意味じゃなかったんだけど。 エバート 俺も最初そう思った。ロシアの女性は男の従属物みたいに振る舞ってるって。 クラニー でも言っとくけど、時々そんな感じなだけだよ。互いをよく知るようになれば、たいていはオープンで正直な人たちだ。 タスキ 僕も最初はちょっと懐疑的だった。 で今は?ドイツと同じとはいえないけど、まぁこんなもんだよねって感じ。 どこがドイツと違うの? タスキ 僕はシュトゥットガルトの出身で、人口60万の町なんだけど、それに比べたらモスクワは人口1100万以上の大都会だし。でも自分を適応させたよ。移籍したことは後悔してないよ。 エバート 俺にはトレーニングの前に体重測定があるのにびっくりした。 クラニー ほんとに?ディナモじゃそんなに厳しくないよ。 エバート スパルタクはえげつないよ~。 俺モスクワに着いたときから毎日体重計にのってたもん。 今は週に2回だけど。少なくとも。 タスキ 基準体重をオーバーするとクラブに100gにつき100ドル支払わなきゃならないというウワサが選手たちの間でまことしやかに流れたこともあったんだよ。 エバート でもつまるとこ俺たちみんなプロだから自分の体は十分気を配ってるわけ。ピロシキとウオッカの取り過ぎは止めとくに越したことない。日常的な体重管理は必要だけど俺にはわからない。でもここじゃそうだから仕方ない。 同時にクラブのボスたちは選手たちの夜遊びに目を光らせていますね。1100万都市でうまいこと姿をくらますことはできますかね? タスキ どこのクラブでもそうでじゃない?僕もそれは理解できるよ。 サポーターはどこにでもいて、僕らのいいパフォーマンスを期待して遠征先に1000㎞ドライブしてくるような人たちなんだよ。ロクに走れなくなるようなことをするより、翌日の練習に集中するべきだよ。 分別をわきまえているんですね。 クラニー 昔はいつも分別わきまえてたわけじゃないんだけど、今はましになったね(笑)俺も大人になったのさ。 4年前なら遅刻はざら、選手たちはTシャツで練習場に来てたし、食事のテーブルにはマヨネーズとケチャップが鎮座してた。 俺自身も変わったけど、この業界もいろんなことが変わったんだよ。 タスキ 4年前と違うってのは思い当たるよ。 でも今はクラブも選手たちもずっとプロフェッショナルだね。ドイツ同様に規律が守られている。 エバート 人は年齢を重ねて失敗から学ぶのさ。 ベルリンにいたころは正直言って俺は全然プロらしくなかった。しょっちゅう飲み歩いてたし、ひょとしたらよくない連中とつるんでいたのかも。今じゃ俺は出かけるか止めとくか3回考えるようになった。 ドイツではいまでもあなたには悪党のイメージがついてまわっていますが、故にブンデスリーガを離れたのですか?(エバートはヘルタ時代に当時のチームメイトのケビン・プリンス・ボアテングとともに路上に駐車していた十数台の車のサイドミラーを破壊して56000ユーロの罰金を命じられた) エバート たしかに昔の俺は荒っぽかった。でも俺を知ってる人は俺がごく普通の若造だとわかってる。俺としてはファンとかジャーナリストがどう思おうがかまわないし、ドイツから逃げたのでもない。俺はいつかまたブンデスリーガでプレーするつもりだ。 スペインからあわただしく移籍しましたね。 (2012年の夏から13年末までバジャドリードに所属。今年の冬の移籍でスパルタクに) 当初バジャドリードの監督と会長とはかなりいい話し合いができてた。彼らは俺に契約期間がのこり1年になったら移籍できるって言ってたんだ。なのに彼らはその時期になったら俺を移籍させるのを渋ったので俺はがっかりした。 その時スパルタクは俺を獲得しようとしていた。とくに前の監督のヴァレリー・カルピンがね。当時スパルタクはリーグの3位で外国人の助っ人を探してた。で俺に目をつけていたんだよ。 タスキさん、あなたはトルコのクラブと交渉しているという噂がありますが タスキ トルコはキャリアの最後かな。今はまだその時じゃないよ。もっと先の話だね。 初夏の雪に粗野な人たち、新しい言葉...それに世界のトップクラスじゃないリーグ あなたたちはタフなチャレンジャーなのか、それともお金に惹かれたのか? タスキ お金は理由のひとつだよ。だってサッカーは僕たちの仕事だから。でもそこで自分のしたいサッカーができるかってことが重要なのは確かだけど。 クラニー 俺にとってもお金は重要なポイントだった。ディナモに行くのはかなりの冒険だけど、金銭的には千載一遇のチャンスだった。だからシャルケとの契約を更新しなかった。 あなたは年に570万ユーロ稼いでいます。 クラニー でも他にスキルがなかったら、将来も金に困らないためには今稼がなくちゃならない。 俺は家族がたくさんいるんだけど、彼らにもリッチでいてもらいたいんだ。 これは俺にとって大きな喜びだ。でもそれができる者ならみんなそうするとおもうけど。 エバート スペインにいた頃、リーグの中堅のクラブからオファーをもらったんだけど、そこが提示してきた年俸はスパルタクの3分の1だった。 リーグ優勝やヨーロッパの大会に出る可能性があってなおかつ大金が稼げれる。こんなうまい話にのらないわけがない。俺はもう22歳じゃないんだし。 自分たちのことがドイツで忘れられるしまうのが怖くないですか? クラニー そうかな?チャンピオンズリーグに出れば話題になるでしょ。 昨シーズンチャンピオンズリーグでプレーしたのはCSKAモスクワとゼニト・サンクトペテルブルクだけです。来シーズン、ディナモはヨーロッパリーグに出場(予選3回戦から)しますが、スパルタクは出れません。 タスキ 僕らはヨーロッパの大会でプレーすることを念頭に置いてここに来た。僕はスパルタクでチャンピオンズリーグに出たい。今年はかなわなかったけど、それが僕の求めるものなんだ。 クラニー 今年はさておき、君たちのクラブは何年間も国際的な大会でプレーしてきている。ディナモはまだまだ経験不足だけどみんなチャンピオンズリーグを目指しているんだ。 タスキ 昨シーズンのスパルタクはファーストラウンドがおわった時点でトップ(ゼニト)に1ポイント差の位置につけていたのに、バックラウンドでしくじって最後に大失敗で終わったシーズンだった。でも僕たちは2001年以来の優勝とチャンピオンズリーグ出場を目指しているんだ。 スパルタクとディナモってどんなクラブですか? エバート その名がすべてを語っているよ。 スパルタク、スパルタン・・・俺たちは剣闘士だ。 タスキ スパルタクは「民衆のクラブ」とも言われているね。そしてロシアでもっとも多くの優勝回数を誇っている。 ロシアのクラブはオリガルヒ(新興財閥)がオーナーやってるってドイツでは聞いているでしょ。でも僕たちのクラブは違う。 クラニー ディナモはたくさんの軍人と警察関係者がバックにいるよ。 タスキ その人たちはどんなことするの? クラニー いままでネガティブな衝撃を与えた人はいないけどね。 俺がディナモに入った頃、いっぺんシュート練習によばれたことがあったよ。俺はサッカーだとばかりおもってたらさ、連れて行かれたところは射撃練習場でピストルと手榴弾を渡された。 ロシアの特殊部隊の訓練を体験することになってるんだよ。警察のクラブならではだろ。 これはディナモの伝統的な慣習で、それから逃げることはできないのさ。 ディナモの平均観客数は8000人に満たないといいます。満員のスタジアムが懐かしくないですか? クラニー スパルタクとのダービーじゃ少なくとも25000人は入るけどね。 でもこれはドイツと違うところだね。シャルケにいた時は毎週5万から6万の観衆の前でプレーしてたんだから。 ロシアの観客にはよくない噂がありますね。スパルタクはサポーターの暴動で数試合を無観客で行わなければなりませんでした。最近ではゼニト・サンクトペテルブルクでも試合中に暴動が起こりました。 クラニー いくつかのスタジアムのサポーターはまじヤバいよ。20年前のドイツみたいなもんだ。サンクトペテルブルクではアフリカ系の選手はモンキーチャントでからかわれる。でもラテンアメリカのルーツをもつ外国人選手として俺には今まで問題が起きたことはないねどね。 ロシアリーグは長移動距離が体にこたえますね。 クラニー ウラジオストックのルチ・エネルギアっていうクラブを知ってる? モスクワからウラジオストックって1万キロあるんだ。ヒコーキで9時間、1回のアウェーゲームで7つのタイムゾーン越えなきゃならないんだぜ! 幸いなことに、このクラブは俺がロシアに来た2010年には降格してたけどね。 今いちばん遠いところはモスクワから飛行機で4時間のシベリアのトムスクだね(このチームも13-14シーズンをもって降格。14-15シーズンはウラル山脈より東側には行かなくてすみます。ルチ・エネルギアはCSKAのロシア代表GKアキンフィエフが「ロシアじゃなくてJリーグでプレーすべき」と発言したことで知られる。) アウェートリップではチームメイトと何して楽しんでいるんですか? タスキ それは難しいね。僕はまだロシア語しゃべれないし、でも旅にかぎったことじゃなく、ここじゃ日常生活でもチームの中でも英語も通じないし。そこらへんのことはあまり期待してないな。 でもそれはピッチの外では一般に重要なことでは?高級レストランでは英語が話されてますよね。 エバート 俺はヘルタで14年すごして、今は新しい何かを学ぶチャンスだと思ってるんだ。新しいカルチャー、新しい言葉、新しい人たちをね。だから俺は高級レストランばかり行きたくない。ローカルな店にも出かけるんだ。このまえ行った小さい風変わりなレストランじゃ英語のメニューすらなかった。歯が少ししかないおばあさんがグリルの上で鶏を曲芸のように回していたよ。たぶん何年もそこで焼いてるんだ。俺たちは席から鶏焼いてるおばあさんを眺める。すげえ面白かった。 クラニー そういう時は簡単なものを頼むのが一番だ。もしくは運を天に任せるか。 ピッチのなかではロシア語で罵ってるんですか? タスキ 僕はスパルタクに来る前からいくつか罵り言葉を知ってたんだ。シュトゥットガルトで白ロシア人とプレーしてたからね(笑) クラニー アレクサンドル・フレブね。彼がしょっちゅう口にしてたのは「ブリャーチ」(блядь) 「くそったれ」って意味。1分間に100回言ってたな。 エバート でも男だったら、それって世界共通じゃない?つか一言ごとに言ってるよね。 「ブリャーチ、オレ今日買い物行ったぜ」とか「ブリャーチ、こっちに来い!」とか。 でもロシア語の本当の罵り言葉は酷過ぎて翻訳不能だ。 タスキ でもピッチの中じゃ言わないにこしたことないね。少なくとも審判の方に向かっては。 エバート その通り。ここじゃ審判は別だ。あいつら俺たちが口を開けた瞬間にイエローカード出してるからな。 チームにウクライナ人の選手はいますか? クラニー アンドレイ・ヴォロニンがいるよ。 彼はどんな感じですか? クラニー とてもいいよ。今ケガさえしてなければ。それともあなたは俺たちに政治のことを話してもらいたいのかい? できれば クラニー 彼の家族はまだウクライナに住んでいることもあってなりゆきを気にしていると俺に以前言ってた。でもピッチ中では関係のない話題だ。 タスキ ドイツからは心配して電話をかけてきた。でも僕が言えたのは自分は大丈夫だよってことだけ。モスクワに住んではいても、サッカー選手の僕らには今のウクライナの不穏な状況はあまり関係が無いんだ。 本当に? タスキ ここのジャーナリストと話すとき、彼らが僕に聞くのはサッカーに関することだよ。政治について尋ねてくる人なんていない。あなたが初めてだよ。 クラニーさん、あなたのフェイスブックにはしばしば「ロシアをボイコットしろ」というコメントが投稿されています。これでも意識することはないのですか? クラニー 俺が何をすべきだと?俺たちはロシアにいて、俺たちの給料はロシアのクラブが払っている。自分が今仕事をしてるところで、自分が良く知らないことについてコメントするなんて俺の性には合わない。もとよりドイツにいた頃から俺は政治に関して発言したことはないし。 クラブはあなたに口止めしなかった? クラニー ないね。それにクラブは選手たちがどんな政治信条を持っているかなんて気にしていない。これは人に対する敬意の問題でもある。 みなさんにとって、モスクワになくていちばん困るものってなんですか? クラニー 本物の黒パンと旨いソーセージ。 タスキ いまのところはないよ。4年後に尋ねてくれたらなにかあるかも。 エバート ベルリンの旨いドネルがもういっぺん食べたいね。
by n-elle
| 2014-07-23 04:08
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